京大、吉田寮厨房ライブ

京大吉田寮 厨房ライブ イラスト

吉田寮、食堂酒場のDJタイム

90年代、京大吉田寮ライブ

京都のパワースポット、京大吉田寮。25年ほど前に、食堂ライブに何度か出演させてもらいました(※私達は京大生でも寮生でもなかった)。出演希望のバンドは音源カセットテープを提出。一晩中ライブがあってたくさんのバンドが演奏します。憧れの吉田寮ライブに出れると決まった時はみんな大喜びでした。

90年代前半。もちろんインターネットもスマホもありません。ライブの告知は直接言うか紙に書いてコピー。そこらへんに貼ってました。当時から見れば、60年代70年代がノスタルジーの対象でしたが、今や90年代懐かしいです。前の日の夜に飲み過ぎてそのまま家に帰らず吉田寮ライブだったり、ライブ前に近所の銭湯に行ってベーシストがおばあさんに垢すりされたり。ライブ自体も異様な空気でした。

その後、吉田寮はさらに進化を遂げたようです。でも、大学を卒業してからは一度も足を運ぶことはありませんでした。バンドは解散、就職して結婚して引っ越し、転勤、出産、育児、学校のPTA。生活や家族のために生きなければなりません。京都を離れたことも大きかったです。とにかく、バンドをやっていたことも吉田寮のことも夢みたいで、というか前世の話みたいでした。

最近、子育ても少し落ち着いて自分の時間も出来てきました。そうするとどういう訳か、タイミングよくバンドのお誘いをいただくようになりました。その流れか(?)、吉田寮でミニライブをしようというお話が来たのです。

残念ながらフルメンバーではありません。出来る範囲でやる事になりました。音を合わせるのも、吉田寮に足を踏み入れるのも24年ぶり。

2019年の吉田寮

吉田寮は新棟も出来、食堂もきれいになっていました。でも元の寮はそのまま。昔と同じでした。トイレの電球は切れていて、ドアを閉めたら真っ暗。私はよく怖いトイレの夢を見るのですが、まさにそのトイレでした。「三枚のお札」(鬼婆の住む家の便所から逃げる時に、和尚さんからもらったお札を使うという話)に出てくるようなお便所です。

そして厨房。食堂酒場のために準備中の厨房では、学生さんがせっせと料理をしていました。オバチャンである私たちもお手伝い。私は白菜切りをしたのですが、ベーシストは鶏肉切りをお願いされてました(今からベース弾くのに肉切らせてごめん)。でも彼女ときたら、洗い場の排水溝の掃除までしてくれました。その洗い場には「自分の事だけじゃなくて、みんなの事も少し考えましょう」みたいな事が書いてありました。

これが自治寮ということ

確かに吉田寮は、決してきれいとは言えません。トイレも恐怖だし厨房の排水溝もゴミが溜まってます。でも、それは大学が管理して清掃員を雇ってないからなのです。(実は、私だったら時給何円やったらここの清掃員として働くか考えた。)ここは自治寮。自分達で寮を運営しているからなのです。そう考えると、きれいだとは言えないにしろ、長年そもそも吉田寮が成り立っていること、プラス、音楽や演劇などの文化がここで育っていることは驚くべきことです。大きなエネルギーと努力をかけて、代々この寮の伝統が受け継がれてきたのです。

洗い場の「自分の事だけじゃなく、みんなの事も少し考える」という貼り紙も、自治寮の生活を円滑に行う上で大事な事であるように思います。汚れたお皿が放ってあれば、自分のじゃなくてもついでに洗って片付ける。なにしろ大学が雇った掃除のオバチャンがいないのです。もちろん本人がやるべきですが、誰かがやらないと大変なことになります。自分だって、ついうっかり忘れることもあるかもしれません。排水溝の掃除だって、誰かがやらないと水が逆流してしまいます。

ライブ前に、食堂酒場のDJタイムというのがあり、ビールを飲んでぼんやりしていました。ベーシストは食堂にあった誰かの布団で寝ています。ヒゲダンスのテーマがかかっています。壁に書かれた「自主管理貫徹」という文字。今は、その言葉がなんとなく理解できました。学生さん、頑張れ。

24年ぶりの復活ライブ

肝心の演奏は。前回、「オバチャン初心者、ボーカルに挑戦」という文章を書いたのですが、その内容の通り、野太いオバチャンの声で歌ったつもりでした。というか、それは達成出来たんだけど、思い切りやり過ぎて音程外れてるのも思い切り(録音は聴くに耐えませんでした)。ま、楽しかったからいいか。誰も上手い演奏なんか期待してないし。とにかく気持ちは込めたつもりです。吉田寮に最大のリスペクトは示したつもり。24年ぶりに一緒に演奏できて、嬉しかったです。前世のごとき遠い過去と今の人生がつながって、吉田寮に「まだまだ頑張りや」と言われてるよう。懐かしい人達にも会えました。

京大生でもなく寮生でもなく、しかもこんな40をとうに過ぎたオバサンに演奏する機会を与えてくださって本当に感謝しています。どんな形であれ、吉田寮の魂が生き続けることを願っています。これからのこの世界を担っていく若い人達に、その魂を受け継いでほしいです。ありがとう、吉田寮。I LOVE YOU!

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