ブラジルへ空想移動
曖昧な感じ
アントニオ・カルロス・ジョビンの曲。コード譜を初めて見たとき、「なんだろ、このややこしいコードは?」と思いました。それまで遭遇したコードはメジャー、マイナー、7thくらいで、しかもスリーコードで事足りていたのです。
そこに出てきたコードはと言うと、◯9、◯#11、◯♭9、◯♭13、などなど。こんなコードがこの世に存在していたのか〜、なんて感心していました。メジャーやマイナーなどシンプルなコードは、「イエス」か「ノー」、はっきりしている感じ。それに比べると、ボサノバのコードは実に曖昧な響きです。「イエスでもないんだけどノーというほどノーでもなくて…。」色に例えると「くすんだ青」とか「紫がかったグレー」とか。そういう色で描かれたボサノバという音楽が好きになりました。大人の音楽です。ブラジルの水彩画という曲がありましたが、水彩画という表現がぴったりな気がします。
コードを弾くだけで異空間
もしそこにガットギターがあって、ボサノバっぽいコードを弾けば、そこはもうブラジルです。ブラジルに行ったことはないのですが、ブラジルの風を感じるのです。
雪国に住んでいる時でした。毎日雪かきが大変な、豪雪地帯です。アパートの一室のコタツに入ってボサノバを聴き、コパカバーナのビーチを想像しました。音楽は想像力をたくましくさせます。たとえそこが豪雪地帯で、本当は雪で窓が開けられない状態でも。窓から見えるのは美しいリオっ子が行き交う海沿いの道、静かに海を眺める彼女たち、少しかげってきた太陽…。
イエスでもなくノーでもなく、曖昧な響き。まぎれもなく大人の感じ。そんなことを考えながらギターを弾く。それにしてもこのコード、弾きにくい〜!