レスポールのネックが折れた!
私のギターのネックは折れやしない
人間誰しも、「自分は怪我などしない」「骨折なんてしない」と思ってはいないでしょうか。私はそうでした。「私のギターのネックは折れやしない」と。
数週間前に、リペアショップの料金表を見て、いろいろなトラブルの中に「ネック折れ」という言葉を目にし、無邪気に驚きました。
「世の中には、ギターのネック、折ってしまう人がいるの⁉︎」
一体どういう管理をしていたのでしょう。普通の生活を送っていたら、折れるわけ、ないですよね…。
ところが、ある日のことです。何かちょっと横着をして、シールドがギタースタンドに引っかかってしまい…。
「バターン‼︎」
私の目の前で、レスポールが顔面から倒れてしまいました。座布団も絨毯もない、フローリングの床に直接打ちつけられました。子供が目の前で、手もつかず倒れてしまったかのようでした。
慌てて持ち上げると、フレットは何も傷がありません。いやー、傷が無くて良かった…、
あれ?なんでこんなに弦がブヨンブヨン弛んでいるんだ?
理解できず、ヘッドの方を見ると、なんと
ネックが折れた‼
木が割れているー!グラグラになってるー!
パックリ割れてしまい、もはや弦を支えることなどできなくなってしまっているではありませんか(写真参照)。私は「自分の人生終わった」と思いました。なんで、なんでこんなことに…。一瞬の不注意がこんな事故を引き起こすなんて。
落ち着け、私。と自分に言い聞かせて、ネットで調べてみると、とにかく早くリペアショップに持っていった方が良いという。お世話になってるリペアショップに先程の写真を添付してメールを送りました。するとしばらくして返信がありました。
早々ですがネック折れ修理可能です,金額は税込\44,000です
納期は1か月位(接着と塗装に日にちを要するので)
できれば弦を緩めて破片などがあればそれもください。
変な折れ方ではないので美しく問題無く直ります。
美しく問題なく直ります
この言葉にどれだけ救われたか!いや、美しくなくてもいい。もう一度、このギターを弾きたいんです。ピンと弦を張った、このギターを。傷痕は残ってもいい。ただ、もう一度一緒に野原を駆け回りたい、そういう気持ちでした。
次の日早速持って行くと、お店の方が言うには、「わりとよくあること」とのこと。年に数件はあるのだとか。そうか。私だけじゃなかったんだ、ネック折っちゃう人。「世の中にはいるそうだ、ネック折る人が」の人、そっち側の人間になってしまうと、同じ境遇の人の存在が妙に心強く感じたりしました。
「長野の工房に送り、修理には1ヶ月ほどかかります」。長野の病院で1ヶ月の入院生活が始まったわけです。
空っぽのギタースタンド。
君のいない夏。(折れたのは7月の終わり)
少し広く感じられる部屋。
そんな感じで時は過ぎていきました。長野の空気は美味しいかな、なんて思いながら。
帰ってきたレスポール
1ヶ月も経たない頃、リペアショップから電話があり、「きれいに直りました」とのこと。翌日、行ってみると、お店の方が最後の点検をされていました。
「え!?これ、あのギターですか?」
私は目を疑いました。傷が、ないのです。
「どこ折れたんでしたっけ?」
本当に、きれいに直っていました。ギターのリペアの技術って、相当高いんですね…。素晴らしい!日本の職人さん、世界のトップレベルに違いないです!
「私、折れたの見たときは『人生終わった』って思ったんです。こんなにきれいに直していただいて、ありがとうございます」と言うと、「そのまますぐに持ってきてくれたからよかったですよ。自分でなんとかしようとして接着剤塗ったりすると大変なんです。釘で打ちつけたケースもあって、それは往生しましたわ。」
釘で打ちつける…。よほど気が動転していたのでしょう。でもそれはさすがにそれはNG行為だとわかります。ただ、接着剤を流しこんだりするのは、わからなくはありません。目に浮かびます、接着剤をつけてもつけてもパックリ割れるネックの様子が。
こうして家に連れて帰ったレスポール。何事もなかったかのように、またずっしりとギタースタンドに鎮座しました。
それから1ヶ月が経ちました。ギターは今でも元気です。何かの拍子に傷口がまたパックリなんてことはありません。先日はコロナで2年半出来なかったライブができました。ギターを扱う時は、前より注意深くなっています。頑丈なスタンドを買おうかとも思っています。
スタンドに置く時は、前に必ず座布団を敷くようになりました。二度とギターを倒したりはしません。皆さんも、「自分のギターのネックが折れるわけない」と過信せず、注意してくださいね。(シールド差したままは引っかかる可能性があるので気をつけた方が良いと思います。)
ネックが折れても人生は終わらない
そして、万が一倒してしまい、ネックが折れた場合は、迷わず、絶望もせず、速やかにリペアショップに連絡してみて下さい!
その後、時折夢を見ます。またギターが倒れてネックが折れる夢を。「またやってしまった…」と自分の愚かさに愕然とした時に目が覚めるのです。そして起き上がり、すぐにネックを確かめ、折れていないことを確認すると安堵するのでした。